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たったひと言、ある夏の日のこと


今朝、なぜだかふと思い出した昔のはなし。



息子が2歳になる少し前、離婚することがもう決まっていて、関東に戻ってくる直前の、今から18年程前のこと。



あとは離婚届を提出して、引越しするだけって日々があって。



当時3階建ての大きな家に1歳の息子と2人で住んでいて、荷造りなど引越し準備や、書類手続きもまだあって数日かかりそうで、



ずっと家に引きこもっている訳にもいかず、よちよち歩きの息子を連れて児童館に行った、暑い夏の日の朝。







児童館ではその日も大きな広間で、小さい子たちが10人くらい、お母さんや先生と一緒に、音楽に合わせて歌ったり体を動かしたりしていて。



これって今思うとすごいよね?2歳ってそんなことが出来るの?



当時の息子は、やんちゃで落ち着きがなく、みんなで歌ったり踊ったりは頑なにしないタイプ。当時わたしはそんなことに悩んでいたな〜、今思えば微笑ましいのだけど。



毎回部屋を抜け出して、どこかに走っていっちゃうので、私はいつも後ろから追いかけて、小さな手をつかまえて部屋に戻ろうとするけれど、嫌だと大泣きされて、



息子はまたよちよちの絡まりそうな足でどこかへ駆け出していく。その日もそんな感じで、私は少し落ち込んでいて。



(あぁ。。これなら来なくてもよかったかな。脱走を何度も繰り返すだけだし。)



そんなこと思いながら、またどこかへ走っていく息子を疲れた顔で追いかけていたんだと思う。



私たちこのままどうなるのかな。

うん、油断したら涙出そう

でも泣いたってどうにもならないし

余計に疲れて悲しくなるだけだし

結局は誰にも頼れないよね、



なんて思いながら、ぼんやりと歩いていた時。



廊下を向こうから歩いてくる、一人の保育士さんとすれ違って。



アップリケのついたエプロンをして、元気そうな50代くらいの女性。ニコニコしながら早足で歩いて、こっちを見てる。



これまで話したことはないし、会ったのもその日が初めてだったんじゃないかな?



(あぁ、どう思われているだろう、他の子はみんな楽しそうに広間で遊んでいるし、脱走しているのはうちだけ。何か注意されたりしたら、嫌だな。)



私はそんなこと考えながらドキドキしていると、



その保育士さんはすれ違いざまに、ひとりごとを言うみたいに、でもはっきりと私に向かって言ったの。





「おかあさん、大丈夫よ。

 ああいう子が、大きくなった時にしっかりした大人になるんだからね。」





今思い出しても、ほんと泣ける。

ただそれだけ。それ以上何か言う訳でもなく、そのまますれ違っていった、本当に一瞬の出来事で。



でもそのシーンを今でもしっかり覚えていて。

遠くに走っていく息子を見ながら、わたしは突然のそんな言葉に急に泣きそうになるけど、



わぁ今泣いたら涙止められない、泣いちゃダメって思いながら



「あ、、はい、、。」と、やっと答えてた。



たったそれだけのことなんだけど。



その何気ない一言に救われた気がして、実はその後何年間も、ふと思い出しては、支えられた言葉だったんだよね。



「おかあさん、大丈夫よ、

 ああいう子が、大きくなった時にしっかりした大人になるんだからね。」



これきっと「根拠は?」って言われたら、たぶんそういうのは無いし、本当のことかなんて誰にもわからないのだけど。



それでも、あの日すれ違ったひとりの保育士さんが、そう言ってくれた。そういう目で私たちを見てくれていた。



ずっと誰かに責められているような、そんな毎日を過ごしていたからなのかな。



そうじゃない、あなたちゃんと育てているのよ、頑張ってるよ、それで良いのよ、って言ってもらえたような気がして。





↑脱走し続けていた人。かわいい…!




もちろん、子育てってこうすると少し上手くいくよ、とか、こんな子にはこんな対応すると良いとか、



そんな情報が必要な時もあるし、コーチとしてお伝えできることもあるのだけど



時にはそれよりも、何の根拠のない「大丈夫」が大切な道しるべになることがあったんだなぁ、となぜだか急に思い出して、



そして今、ぼんやりしてるけど芯のある、優しい大人になろうとしている息子を思って、じんわりとしました。



大切に覚えておきたい、たった一言、あの夏の思い出。








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